「寒い中大変でしょう。すいませんねぇ」
おじさんからこう声をかけられました。
この寒い中、段ボールひとつで生きているおじさんからです。
おじさんたちの方がもっと大変なのに、こちらの気遣いをしていただきました。
おにぎりひとつ。本当に私たちは小さなことしかできませんが、その言葉に胸が熱くなりました。
と同時に、自分たちがしていることの意味を少なからず感じられた瞬間でもありました。
このような炊き出しも、陰日向に多くの支えがあってこその継続です。本当にありがたいことです。
ここ数日は本当に寒い日が続きました。本日も空からは冷たい雨。初回といい今回といい、節目の時は雨で祝福されているようです。(笑)
そして、前回とは違い、今回の人手はかなり少なめ。(汗)
雨の中の作業ということもあり、パンも考えましたが、やっぱり「寒い時こそ温かいおにぎりを」ということで、せっせとおにぎりを作りました。
配食に回れる人数も考えて、今回は少なめ(といっても130個ほど)のおにぎりを作り、雨に濡れたアスファルトを歩いたのでした。
建設中のスカイツリーが見下ろす隅田川沿い。高速道路の下には、多くのおじさんたちが暮らしています。
そんな中、あるおじさんは風を避ける段ボールもテントも持たず、階段で座っていました。小さく、ちぢこまって。
「こんばんは。大丈夫ですか?私たちひとさじの会といいます。今、おにぎりをお配りして回っているんです。よかったらおひとつどうぞ」
「すいません。ありがとう。大丈夫です」
高速を走る車の音にかき消されそうになりながらも、二言三言言葉を交わし、おにぎりとカイロを差し出しました。
受け取るその手は寒さで震えていました。おじさんはきっとこの階段でそのまま夜を明かすのでしょう。
私たちは、夜回りが終われば家に帰ります。暖かな屋根の下で寝ています。でもこのおじさんたちは…
「おにぎりひとつ渡してどうなるの?」と言われることもあります。
その言葉に力なく頷いてしまう自分もいます。
―おにぎりひとつしか渡せない。なんて無力なんだろう。
―でも、おにぎりひとつなら渡せる。今はまだこのくらいしか出来ないけど、ここから一歩ずつはじめていこう。
「一度に全部」はなかなか難しいことです。
日々の暮らしの中で、自分の時間を、労力を、資源をどれだけ費やすことができるのか。
人として、お坊さんとして、社会にかかわるということ。そこには難しさもありますが、楽しさも、そして学ぶことも多くあります。
おじさんからの言葉、震える手、自分の在り方・・・いろいろな考えが頭を巡る中、炊き出し&夜回りは終了しました。
回を重ね、準備も手際もスムーズになり、また夜回りの心得も出来てきた頃です(ようやくですが)。
奇しくも初回と同じ雨の中、今までの自分を振り返る回となったと思います。合掌