入学式や入社式、新学期や新年度など新たな出会いの多い4月に入り、ひとさじの会がおこなわれました。
この日は、春のうららかな気候とはほど遠く、肌寒く雨の中でのスタートとなりました。
わたしが到着した頃には、すでに最初に炊きあがったお米からおにぎりが作られていました。
調理場では、次々に炊きあがったご飯がトレイに移し替えられ、味付け、おにぎり作り、と手際よく流れていきます。
この日わたしが担当したのは水場です。水場では、炊飯の際にご飯をくるんでいた炊飯ネットに付いた飯粒を取り除きます。
できる限り一粒でも無駄にしない。
炊飯ネットに付いた飯粒は剥がして一つに集めていきます。
この作業をすべての炊飯ネットにおこなうため、最後には2合分くらいの量になります。こうなってしまうと、もはや飯粒とは呼べません。
ここで集められた飯粒のかたまりは、会員の寺院近くの霊園でネコや鳥のご飯にさせていただいています。
最後に調理器具の洗いものをし、法要の後、夜回りの出発です。作業中降っていた雨は出発する頃には上がっていました。
今回、わたしが担当したルートは、過去2回参加した時と同じ隅田川沿いのルートでした。ただし、この日はいつもとちょっと様子が異なります。
隅田川は日本でも有数のお花見スポット。この日はまさに満開の桜がわれわれを出迎えてくれました。様子が異なるというのは、もちろん満開の桜のことだけではありません。
桜が綺麗ということはそれだけ多くの人が集まるということ。この日は区主催の「桜祭り」のまっただ中だったのです。
それだけならまだ良いのですが、その影響で高速道路の下などが立ち入り禁止に。なんと、その場所で生活しているおじさん方が立ち退きを迫られているのです。
そのため、ひとさじの会も通常とは少し異なるルートでの夜回りとなりました。
夜回りの最中、おじさん方とはいつもと違うところでお会いしました。
今回は、近頃の寒暖の差が影響しているのか、体調をこわして風邪を引いている方が多かったようです。
暖かくなりはじめるこの時期の不意の寒さは、おじさん方に大きな打撃を与えるのだということを肌で感じとりました。
その一方で、真冬にくらべると、ベンチに座っている方や身体を起こしている方が多かったようです。
おにぎりを手渡しながら、「待ってたよ!」とか「ちょっと話を聞いてくれ!」とか、日々の生活のことやおじさんのこれまでの半生のお話を聞かせていだだきました。
このようなおじさん方へのおにぎりの手渡し、おじさん方との会話、ひとつひとつが新たな出会いとして刻まれていきます。
われわれは大層なことはなにもできません。
おにぎりをひとつ渡すことができるだけなのです。ただ、ひとつひとつのおにぎりの中には、会員ひとりひとりの思いが込められています。
ひとつひとつの出会いがわたしたちを後押ししてくれます。
この日は、ボランティアの方にも多くの参加をいただき、満開の桜の下で新たな出会いを実感した一日でした。
今後とも、ひとつひとつのおにぎりに心を込めて、活動を続けてまいります。合掌