この日は暖かな夜で、まだこの会に参加するようになって日の浅い私の目にも、路上で生活されている方の数が増えていることが分かります。
「もう少しおにぎりの数を増やさなきゃね」とスタッフの方がお話されている声も聞こえました。
私が初めて参加させていただいたのは、冬の最中でした。
たくさん厚着して出かけていったにもかかわらず、数時間外にいるだけで身体はしんから冷え切ってしまいます。
ダンボールを地べたに敷いて、その上に寝ている方はどれだけ寒いだろう、歩いてお配りしてはじめて路上での生活の辛さを目の当たりにしました。
おにぎりと一緒に温かいお茶を差し上げた時、にっこりと微笑んでくれた顔は忘れられないものとなりました。
私が暮らしてきた田舎では、路上で生活をしている方を見かけることはほとんどなく、新聞やテレビで見るくらいで、とても遠い存在に感じておりました。
回を重ねるにつれ、おにぎりやお茶を差し上げる時、少しずつお話が出来るようになりました。
交わした会話の中から、「路上生活者」という言葉にくくりきれないそれぞれの方の人生があって、その時その時を一生懸命生きてきたことが分かります。
ご病気を抱えながらも前向きに生きていこうと思っている方、過去の思い出とともに生きている方、いろんな方がいて、私達が普段接する人達と根の部分では変わらないと思うようになりました。
二時間ほど歩いておにぎりをお渡しすることに身体も慣れてきて、この日はいつも乗る駅より少し先の、家に近い駅まで歩いて帰りました。
歩くのに丁度良い温度、穏やかな夜で、かすみがかった空にぼんやりと大きなお月さまが出ておりました。
私達も路上で生活している方も隔てなく、温かく見守ってくれているようでした。