<はじめに>
私が「ひとさじの会」の存在を知ったのは、2012年9月に全国青少年教化協議会 臨床仏教研究所主催の大正大学で行なわれた「仏教者の社会貢献を考える集い」でした。
その時、「ひとさじの会」事務局長の吉水岳彦上人がパネリストの一人として参加され、路上生活者をはじめとして社会的弱者の「苦」に寄り添う運動を続けておられる貴重な活動内容の報告がありました。
僧侶の本分は、苦悩の中で生きている人々に向き合い・支縁活動をしながら、少しでも社会貢献していくことにあるとして、若き行動する仏教者として活躍されている姿に感銘を受け、私も微力ながら何かお手伝い出来ないかと思い、今回、活動の一つである月2回行われている路上生活者への炊き出しとおむすび作り、配食と医薬品等を配布する活動に初めて参加いたしました。
活動は、四つのフェーズで行なわれました。
- 15時からのおむすび(一個300g)作りと配布医薬品等の袋詰め(光照院)
- 配食に出発する前の読経と回向(光照院本堂)
- 配食(浅草・上野公園近辺)…路上生活者の方々が段ボール等で寝床を作られる20時頃に、各班8・9名、4~5班に分かれ、「こんばんは、夜分にすみません、ひとさじの会です」と寝床ごと、声を掛け、おむすびと無料の医療相談会や次回の配食日などの案内を記した紙を渡しながら、体の状態を聴き、必要に応じて医薬品を渡す。そして相談事等を丁寧に傾聴し解決策を一緒に考える。
- その日の各班の活動報告、トピックスとまとめ(浅草駅近辺)
<感 想>
1.配食について
吉水上人のご指導のもとに上野公園を担当して、二つの事を学びました。
一つは、路上生活者の方の目線に合わせ、心に寄り添い、おむすびを通じて縁を結ぶ重要性です。英語の「UNDERSTAND」は、「理解する」と訳しますが、「同情し思いやる」「意思疎通する」という意味もあります。
難民事業に長年取り組んでおられる犬飼道子さんは「UNDERSTAND」に関して名言を残しておられます。
「人々の心を開き、心を通い合うために必要な心構えは、UPPER-STAND(相手の上位に立つ)ことではなく、UNDER-STAND(下位に立つ⇒相手の立場に立つ)ことである。釈迦もキリストも目は下に下に向いているのに、傲慢な人間は上に上に目が向いている」。
言うは易し、行うは難しですが、少しでも近付くべく精進し、学び、縁を結んでいきたいと思っています。
二つは、「UNDERSTAND」の精神をベースに「他者のこころに根気強く耳を傾ける力」即ち、傾聴の大切さです。
そして傾聴することによって、自分自身の気付き・学ぶにもつながるのではないかと思っています。
路上生活者の方は、複雑な過去を持ちながらも、どちらかと言うとシャイで人が良さそうで、遠慮深い人が多い印象を持ちました。
吉水上人は相手の気持ちに寄り添いながら、doingでなくbeingを大切に、縁を結んでおられました。
マザーテレサは、「すべての人、特に苦しんでいる人々の中に、神を見る」という言葉を残していますが、吉水上人は相手の中に、如来を見、恭敬の心で接しておられたと感じました。
「一毛孔の中に無量の仏刹あり。荘厳清浄にして、曠然として安住す」(『華厳経』)
これらの点について、多くの学びと反省の機会を得たことは、誠に有難い事でした。
そして、おむすびを渡す時に触れた手の温もりも印象深く残っています。
2.配食前の読経と祈りについて
配食に出発する前に、光照院本堂ご本尊の阿弥陀如来に向かって、読経と祈りを捧げる時間を20~30分間持ちました。
これは、ひとさじの会の基本的精神に立ち返り、今晩も良きご縁に結ばれます様、又、自分自身の懺悔も含め、読経し祈りによって自分を清らかにし出発することは、大変意義ある重要な行であることを痛感しました。
3.参加者について
老若男女、都合約40名の方がボランティアとして参加され、ベテランの方の指導のもと、てきぱきと行動されていること、そして学生の方も含め若い方が多く参加されていることが嬉しく印象に残りました。
今後も、出来る範囲内で参加させて頂きたいと思います。ご教導の程お願い申し上げます。